ギネスブックにおいて、「地球上で最も蔓延している病気は歯周病であり、地球上を見渡してもこの病気に侵されていない人間は数えるほどしかいない。」と認定されています。それほど、人類と歯周病とは切っても切れない関係にあると言えます。 以前から、歯周病の原因は歯周病菌であると言われてますが、最近になって、歯周病菌によって全身的に大きな影響が及ぼされることや、発症のメカニズム、人間の持つ免疫とその抵抗性、効果的な治療方法などが分かってきました。 歯周病は慢性的感染症であり、完治はありません。しかし、進行を食い止めたり、緩解させることは可能です。 それゆえに、なかの歯科クリニックでは、患者様それぞれの状態にあった歯周病の治療法を提案させていただき、治療後のメインテナンスを重視しています。
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歯周病とは、歯と歯肉に近い部分についた歯垢(プラーク)の中にいる細菌によって引き起こされる病気です。 歯と歯茎の境目についた歯垢(プラーク)から、歯の根にそって歯周病菌が入り込み、歯を支えている周りの組織をじわじわと壊していき、最後には歯が抜け落ちてしまいます。 歯肉に炎症がおきた状態を歯肉炎、歯槽骨などを支えている組織全体が崩れてしまう病気を歯周炎といいます。 また、初期の歯周病はほとんど自覚症状がないため、気付かない間に悪化させてしまうことがよくあります。 |
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歯周病は「歯周ポケット」から始まる |
歯肉に炎症が起きると、歯と歯茎の間の溝が深くなります。 これを歯周ポケットと呼び、この溝(歯周ポケット)は炎症によってどんどん深くなっていきます。 歯周ポケットの中は酸素がなく、わずかな出血などから栄養が豊富なため、酸素の苦手な毒性の強い細菌「歯周病原性細菌」の格好の住みかになり、細菌による炎症と歯周ポケットの形成が繰り返され、歯周病が進行していきます。 ※健康な状態であっても歯と歯肉の上端部分には溝がありますが、これは歯肉溝と呼ばれ歯周ポケットと区別されています。 |
歯周病がひきおこす病気 |
「サイレント・アーミー」〜沈黙の病気〜と呼ばれる歯周病。 歯周病はほうっておくと全身疾患を引き起こす引き金にもなりかねない病気です。 |
■ 歯茎の健康状態と冠動脈性心疾患の関係 |
無病 | 歯肉炎 | 歯周炎 | 歯がない | |
死亡(死因を問わず) | 345人(9.7%) | 318人(13.9%) | 556人(31.1%) | 877人(40.8%) |
冠動脈性心疾患による死亡 | 92人(2.6%) | 93人(4.1%) | 151人(8.4%) | 225人(11.9%) |
冠動脈性心疾患による入院 | 231人(6.5%) | 170人(7.4%) | 258人(14.4%) | 413人(19.2%) |
冠動脈性心疾患全体 | 288人(8.1%) | 232人(10.2%) | 349人(19.5%) | 556人(25.9%) |
25〜74歳の男女9,760人を対象にした調査。歯周病の重症度が増すほど、冠動脈性心疾患になるリスクも高くなる。 |
■ 早産・軽量児と歯周病の関係 |
歯周ポケット拡大度比較 正常体重児を産んだ母親と早産・軽量児を産んだ母親の歯周ポケットの拡大度を比べてみると、早産・軽量児群の方が深く、歯周病になりやすいことがわかっています。 |
■ 全身疾患と歯周病の関係 |
呼吸器… | 肺炎・喘息・咽頭炎などを起こしやすくなる |
心臓・血管… | 致命的な心臓発作を起こすリスクが2.8倍になる |
子宮… | 早産(低体重出産)のリスクが7.5倍になる |
糖尿病… | 歯周組織の感染症や炎症はインシュリン抵抗性を高め、血糖値のコントロールが困難に。結果として糖尿病が悪化 |
歯周病は、「沈黙の病」などと呼ばれるように痛みなどの自覚症状が出にくく、それが災いして予防を怠りがちになったり、進行が進んでしまうことがあります。 しかし、歯肉炎の段階なら歯垢をきれいに取り除けば症状は改善しますし、歯周炎になっていても進行を止めることは可能ですので、しっかりと治療することが大切です。 |
歯周病のもっとも基本的な治療法は、プラークコントロールです。 病原性プラークを除去し、口の中のプラークを正常なレベルに維持し、無害な細菌グループが支配的になる環境を整えることが重要です。 そのために通常、歯垢や歯石の除去とブラッシングの指導が行われます。 その後、麻酔し初期の治療でとりきれなかった歯周ポケットの深いところについた歯石を取り除く治療を行います。 歯周ポケットの非常に深いところについた歯石は、歯茎を切開して歯垢を取り除く手術を行います。 |
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手術で歯周病を治す |
歯周病の治療で歯茎を切開することがあります。 歯茎にメスを入れる目的は主に次の3つです。 【手術の目的】 1.深い歯周ポケット内部を清掃します。 2.破壊された骨や歯肉のかたちを改善します。 3.再発予防のために歯肉の改善を行います。 |
歯周病が進行した場合は |
以前は進行した歯周病では歯を抜く以外に方法はありませんでしたが、下記のような方法が開発され歯を残すことが可能になってきています。 GTR法(歯周組織再生誘導法) GTR法とは、失われた歯根部の周りを特殊な膜(ゴアテックス)で覆い、歯肉の進入を防いで、歯槽骨(歯の土台となる組織)を再生させる方法です。 |
当院では、歯科医師と、歯科衛生士の国家資格を持った専門家が虫歯予防、歯周病予防の施術を行っています。予防には原因の徹底除去が重要と考え、ブラッシング指導をはじめとしたセルフメンテナンスの向上、セルフメンテナンスでは補いきれない部分に対するクリニックにて施術するプロフェッショナルメンテナンス、そして3DS(殺菌剤を用いた虫歯、歯周病原因菌の除去),歯周外科などを行うことによるメンテナンスを積極的に行っています。 |
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歯周病は歯肉炎の段階では、歯の磨き方など口の中の健康管理を積極的にケアすることである程度改善します。しかし、ご自身のセルフケアだけでは歯垢・歯石をなかなかとり切れないのが実情です。定期的に歯科クリニックでプロによるクリーニングを受けて、ご自身で取り切れない歯垢・歯石を取り除いておくことが重要です。 また、歯周病は一度進行してしまうと元に戻すことは難しく、かかり始めには症状があまりなく自覚しづらい病気ですので、検査をうけて早期発見する事も大切です。ある程度症状が進行している場合は出来るだけ早めに診察を受けられることが大切です。 |
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歯周病の検査 |
■プロービング検査 プローブという道具を使い、歯周ポケットの深さを調べます。 ■X線写真による検査 X線写真により歯の周りの骨の溶け方を調べます。 ■BML細菌検査(保険外) 術前の最近を調べることで虫歯、歯周病のリスクを把握することができます。 術後の検査で、術前からの改善を確認できます。 |
ブラッシングの仕方 |
1.歯ブラシの持ち方 |
歯ブラシの持ち方に決まりはありませんが、えんぴつを持つように磨くと毛先の余分な圧力がかかりません。 ※難しい場合は楽に磨ける持ち方を探しましょう。 |
2.歯周病に効果的なブラッシング方法 |
・バス法 歯ブラシの毛先を根の方向に45°に向けて前後に小刻みに動かします。 このことにより、歯と歯肉の境目の清掃や歯肉の改善に効果があるといわれています。 ・ローリング法 歯ブラシを歯茎にあげ、上の歯は上から下へ、下の歯は舌から上へ向かって歯ブラシを回転させるようにして磨きます。 歯茎のマッサージと歯の表面の汚れや歯垢を取ることができます。 |
3.歯ブラシの選び方のポイント |
・大きさ 大きい歯ブラシでは口の中で動きがとれません。 歯の奥までとどくような、小さめの歯ブラシを選びます。使う人の上の前歯2本分くらいが良いでしょう。 ・硬さ 普通がおすすめです。歯肉にブラシが当たって痛みがあり、ブラシを行うことが困難な場合は、柔らか目のブラシをご使用下さい。 |
ブラッシングの補助的用具 |
歯と歯のすき間などどうしても歯ブラシの毛先が届かない場所の清掃に歯間ブラシ、糸ようじ(デンタルフロス)などをおすすめします。 |
●歯間ブラシ |
細い針金の周囲にブラシをつけたようなものです。歯ブラシの毛先が入りにくい歯と歯の間、歯茎の近くをきれいにします。隙間に入れて歯の表面に沿わせながら前後します。かなりの歯垢や食べかすがとれます。サイズはいろいろありますのでご自身にあったものを選び、入らないところには無理に入れないようにして下さい。 |
●デンタルフロス(糸ようじ) |
ナイロンの糸を歯と歯の間にすべらせるようにいれて、歯垢や食べかすをしごき出します。歯の間のすき間が狭い人に適しています。歯と歯の間の虫歯予防に効果的です、。歯間に挿入しづらい方は、ワックスがコーティングされたタイプがおすすめです。 |
●ウォーターピック |
水をノズルの先から勢いよく発射し、歯についた汚れを洗い流す機器です。ウォーターピックでは歯ブラシの届かない歯周ポケットの底のほうの汚れを洗浄することができます。しかし、歯に付着した歯垢や歯石は洗ったくらいでは洗い流すことはできません。 |